ヨハン・ヴィンセント・ガルトゥング(Johan Vincent Galtung、1930年10月24日 - 2024年2月17日)は、ノルウェーの社会学者・数学者。

人物・来歴

ヴァイキングの時代から続く貴族の家系に生まれ、父は医者、陸軍少尉、オスロ副市長も歴任した人物である。オスロ大学にて、1956年に数学で、翌年には社会学で博士号を取得。20代半ばの頃には、良心的兵役拒否者として12カ月間の単純労働に従事した。その後、労働期間の延長を拒んだために労働刑務所に6カ月間収監された。

略歴

  • 1930年10月24日 オスロに生まれ
  • オスロ大学で数学と社会学の博士号を取得。
  • 1959年 - オスロ国際平和研究所(PRIO)を創設し、1970年まで代表を務める。
  • 1964年 - 雑誌 Journal of Peace Research を創設し、編集長として、ヨーロッパにおける平和研究を主導した。
  • 1987年 - ライト・ライブリフッド賞を受賞。
  • 1993年 - 平和的手段による紛争解決のための国際NGO、TRANSCEND International(トランセンド・インターナショナル)を創設。
  • 2024年2月17日の朝にバールムの保健機関で死去。93歳没。

主張

戦争のない状態を平和と捉える「消極的平和」に対し、貧困、抑圧、差別など構造的暴力のない状態を「積極的平和」とする概念を提起した。これまでに、スリランカ、アフガニスタン、北コーカサス、エクアドルなど、世界で40ヶ所以上の紛争の仲介者をした。日本においても中央大学、国際基督教大学 (ICU) 、関西学院大学、立命館大学、創価大学などで客員教授を務める。安倍晋三が主張した「積極的平和主義」に関しては、自身の唱える積極的平和とは真逆であると述べた。

尖閣諸島の領有権を巡って日中が対立している状況に対し、中国と日本がそれぞれ40%ずつの権益を分けあい、残りの20%を北東アジア共同体のために使うという解決案を示している。

邦訳著書

単著

  • 『90年代日本への提言―平和学の見地から』、中央大学出版部、1989年
  • 『平和への新思考』(高柳先男・塩屋保訳)、勁草書房、1989年
  • 『仏教――調和と平和を求めて』、東洋哲学研究所、1990年
  • 『構造的暴力と平和』(高柳先男・塩屋保・酒井由美子訳)、中央大学出版部、1991年
  • 『市民・自治体は平和のために何ができるか――ヨハン・ガルトゥング平和を語る』、国際書院、1991年
  • 『平和的手段による紛争の転換――超越法』(伊藤武彦編集、奥本京子訳)、平和文化、2000年
  • 『平和を創る発想術――紛争から和解へ』京都YWCAほーぽのぽの会訳、岩波書店、2003年
  • 『グローバル化と知的様式――社会科学方法論についての七つのエッセー』矢澤修次郎・大重光太郎訳、東信堂、2004年
  • 『ガルトゥングの平和理論――グローバル化と平和創造』(木戸衛一・藤田明史・小林公司訳)、法律文化社、2006年
  • 『ガルトゥング紛争解決学入門――コンフリクト・ワークへの招待』藤田明史・奥本京子監訳、トランセンド研究会訳、法律文化社、2014年
  • 『日本人のための平和論』御立英史訳、ダイヤモンド社、2017年
  • 『ガルトゥング平和学の基礎』藤田明史編訳、法律文化社、2019年

共編著

  • 『平和への選択――対談』(池田大作)、毎日新聞社、1995年
  • 『日本は危機か』(安斎育郎)、かもがわ出版、1999年
  • 『ガルトゥング平和学入門』 (ヨハン・ガルトゥング+藤田明史編著、安斎育郎、奥本京子、西山俊彦、伊藤武彦、中野克彦)、法律文化社、2003年

脚注

関連項目

  • 平和
  • 平和学

外部リンク

  • トランセンド研究会 公式ウェブサイト(日本語) - トランセンド研究会

【講演詳細】「平和学の父」ヨハン・ガルトゥング博士は日本で何を伝えようとしたのか 東大新聞オンライン

ヨハン・ガルトゥング博士とモンテ・カセム館長の対話 「アジアの平和に向かって」 1/2 YouTube

ヨハン ガルトゥング 講演 2016年5月31日 立命いばらきキャンパス YouTube

「平和学の父」ヨハン・ガルトゥング博士が緊急再来日!日本の、世界の平和のために!クラウドファンディングがスタート! 国際平和映像祭

ヨハン・ガルトゥング博士が来学、講演“On the Art of Peace” The Weekly GIANTS ONLINE